CIDAO SPECIFICATION ADDENDUM

CiDAO 開発仕様書 v2.1
電子投票拡張モジュール

公職選挙の電子投票(投票所内/インターネット投票)の他自治体動向を踏まえ、CiDAO の認証・投票アーキテクチャに将来拡張可能な抽象化を組み込むための差分仕様。v2.0 本体は変更しない。

v2.1 / Addendum 作成日:2026-06-23 起案:CBI 中司 対象:v2.0 本体への差分
位置づけ:本書は v2.0 への Addendum(差分追補)。v2.0 §3.1(認証)・§3.2(投票)・§4.3(セキュリティ)・§P1(認証拡張)・§P4(行政連携)に対する拡張ポイントを定義する。v2.0 本体の記述は変更しない。Phase 1 リリース判断には影響しない。
背景:印西市議会議員つづきまり子氏が、令和8年(2026年)6月第2回印西市議会定例会の一般質問「2. 投票方法のデジタル化について」において、「タブレット端末を活用した『電子投票』を導入する自治体も現れており、無効票の防止や開票時間の短縮、職員負担の軽減などの効果が報告されている」「将来的な選択肢として電子投票の研究・検討を進めるべきではないか」と提案した(議員Instagram @mariko77t 議会報告 Vol.13・印西市議会スマート中継より確認)。同議員の念頭にあるのは「投票所内電子投票(タブレット型・四條畷市方式)」であり、インターネット投票ではない点に留意が必要。提案段階は「研究・検討開始」であり導入決定ではない。CBI 中司より「公職選挙の電子投票は CBI 単独では運営不可だが、将来行政連携時に CiDAO の認証・投票基盤が接続可能となるよう拡張点を確保したい」との要請を受け、本拡張モジュールを起案する。

CiDAO v2.1 電子投票拡張モジュール

目次

  1. 位置づけと前提(公職選挙と CiDAO の境界)
  2. 他自治体動向まとめ(2026年6月時点)
  3. 拡張アーキテクチャ(v2.0 への差分)
  4. ロードマップ(v2.0 Phase 1/2/3 との対応)
  5. 印西市議会・行政との接続パターン(5.1 議員提案を受けたCBIの立ち位置/5.2 CBIの具体的支援可能性/5.3 論点テンプレ/5.4 CiDAO の「環境整備プラットフォーム」役割
  6. 参考文献

1. 位置づけと前提

1.1 公職選挙と CiDAO の境界

公職選挙(市議会議員選挙等)の電子投票は、公職選挙法および電磁的記録式投票法(地方選挙のみ)の管轄であり、市民活動団体(CBI、登録番号08-001)が単独で運営することは法的に不可能である。

議員提案の正確な射程:つづきまり子議員の議会質問は投票所内電子投票(タブレット型・四條畷市方式)に限定されており、これは電磁的記録式投票法のもと現行法で実施可能な領域である。実施主体は印西市選挙管理委員会であり、CBI/CiDAO は直接の運営に関与できない。本拡張モジュールが扱う「CiDAO 側の拡張」は、議員提案そのものではなく、将来別の自治体連携シナリオ(インターネット投票実証への参加など)が生じた場合に備えた仕様面の余地確保である。

本拡張モジュールが目的とするのは「CiDAO が公職選挙を代替する」ことではなく、以下の 3 つの拡張可能性を仕様レベルで確保することに限定される(議員提案の射程外)。

拡張可能性具体例確信度
① CiDAO アカウントが将来、公的投票 ID と連携できるマイナンバーカード公的個人認証(JPKI)でログイン可能にし、自治体ネット投票実証実験への参加導線になる
② CiDAO の意向投票結果を、公職選挙の参考データとして議会・行政に提示できるv2.0 §P4「投票結果共有(印西市議会への意見集約)」の技術的実装
③ 自治体が電子投票を導入した際、CiDAO の運用ノウハウ(参加率向上・UI 設計)が転用できるつくば市スーパーシティ実証への CBI からの提案・参加

議員提案に対する CBI の現実的支援可能性:投票所内電子投票の運営は印西市選管が単独で行うが、CBI は「市民側からの参考資料提供」「諮問的市民投票(CiDAO Phase 1)による市民の電子投票受容意向の把握」という別軸での側面支援が可能(詳細は §5)。

1.2 公職選挙法・関連法令の整理

v2.0 §法令対応表(公職選挙法行)の記述は維持。本拡張モジュールでは以下の追加整理を行う。

制度適用範囲CiDAO との関係
電磁的記録式投票法地方公共団体選挙(首長・議員)のみ/投票所内限定CiDAO は対象外。将来、自治体採用時に投票端末モード(§3.3)で連携余地
公職選挙法(インターネット投票規定)2026年6月時点で未制定。在外選挙のみ総務省研究会で実証中CiDAO は「諮問的市民投票」として位置づけ(v2.0 §法令対応表のとおり)
公職選挙法 第138条の3(人気投票の公表禁止)「公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない」。罰則:2年以下の禁錮または30万円以下の罰金(同法第242条の2)CiDAO で候補者名を含む人気投票を行い結果公表すると違法リスク。§5.4.6 で具体制約を明示
マイナンバー法マイナンバー本体の利用は厳格制限。JPKI 電子証明書は別建てCiDAO は JPKI(公的個人認証)のみ利用可能性あり。マイナンバー本体は使わない
地方自治法(直接請求権)市民の請求権は別制度v2.0 維持:法的拘束力なしと明示

2. 他自治体動向まとめ(2026年6月時点)

本節は CiDAO 設計の前提となる事実関係。一次情報の URL は §6 参考文献に集約。

2.1 投票所内電子投票(電磁的記録式)

結論:2002年新見市開始 → 2003年可児市の機器トラブルと選挙無効訴訟(2005年最高裁確定)→ 専用機メーカー撤退 → 2016年で実施途絶2024年12月22日に大阪府四條畷市が8年ぶりに再開し、京セラ「デジ選」(タブレット汎用機)で実施。総務省が2020年に汎用機を許容する方針に転換したことが追い風。確信度:高。

自治体出来事
2002.6岡山県新見市全国初の電子投票(市長・市議選)
2003.7岐阜県可児市市議選でサーバー過熱・投票中断、後に最高裁で選挙無効確定(2005)
〜2016累計10団体25回専用機メーカー撤退で実施途絶
2020総務省タブレット等汎用機器を許容する方針へ転換
2024.12.22大阪府四條畷市市長選・市議補選で8年ぶり再開。京セラ「デジ選」採用。開票1時間40分、開票要員1/3(27人)
2024.12同上視覚障害者向け音声機能省略で批判
2025〜四條畷市費用対効果検証を市議会で実施

2.2 インターネット投票(実証実験)

結論つくば市が日本のフロントランナー。2019年からブロックチェーン+JPKI+顔認証で実証を継続し、2025年2-3月にもスーパーシティ施策投票で本番運用級の実証を実施。2024年には市長がデジタル臨調で「次の市長選・市議選でネット投票を」と表明。ただし現行法では公職選挙に使えないため、住民投票・施策意向調査での運用に限定。確信度:高。

主体出来事
2019.8つくば市最終審査会で150票のネット投票実証。Hyperledger Fabric + マイナカード + 顔認証
2022.11内閣府×つくば市スーパーシティ枠組で模擬住民投票
2024.2つくば市長デジタル臨調で「次の市長選・市議選でネット投票を」表明
2025.2-3つくば市スーパーシティ施策3分野でJPKI署名認証ネット投票実施。上書き投票(買収対策)も実証
2025年度つくば市投票システム改修+大規模模擬投票予定

2.3 総務省・在外選挙インターネット投票

結論:総務省は令和元年度〜令和6年度まで6年連続で在外選挙インターネット投票調査研究報告書を公表。令和6年度版はスマホ搭載マイナカード機能の活用検討・アプリ要件整理が中心。2025年4月公布の公職選挙法改正(法律19号・20号)で電磁的記録式投票機の期日前投票所等の規定を整備(19号:2025年5月施行、20号:2026年1月施行)。ただしインターネット投票を一般の公職選挙で解禁する法案はまだ国会提出に至っていない。確信度:高。

2.4 CiDAO への含意(要約)


3. 拡張アーキテクチャ(v2.0 への差分)

3.1 NEW AuthProvider 抽象化層

v2.0 §3.1(認証・会員管理)の実装方針を維持しつつ、将来 JPKI/xID/TRUSTDOCK 等を差し替え可能にするため、認証層を AuthProvider インタフェースで抽象化する。

// 概念モデル(実装言語は v2.0 §4 に従う)
interface AuthProvider {
  id: string;                  // "email" | "jpki" | "xid" | "trustdock"
  level: AuthLevel;            // light | basic | verified | publicId
  authenticate(): SubjectId;   // 不透明文字列。個人情報は含まない
  verifyHandle(): VerifyResult;// 検証可能な属性(住所等)
}

type AuthLevel = "light" | "basic" | "verified" | "publicId";
// publicId = 公的個人認証相当(JPKI/eIDAS 相当)

設計指針

3.2 AMEND 認証段階表の拡張(v2.0 §3.1.3 への将来差分)

v2.0 §3.1.3 の表に「公的認証済」段階を将来追加するための予約。Phase 1 では実装しない

ステータスv2.0v2.1 拡張案(Phase 2+)
未登録閲覧・参加申込のみ同左
ライト登録重み 0.1/諮問的のみ同左
メール登録のみ重み 0.3/0.15同左
住所確認済(ハガキ)重み 1.0/0.5同左
公的認証済(JPKI)重み 1.0/0.5(住所確認済と同等)。「公的認証済」バッジを加点的に表示。公職連携モード(§3.3)でのみ別枠集計可能

設計意図:JPKI を「重みを増やす」のではなく「別枠集計可能にする」用途に位置づける。これにより、公職選挙参考データとしての提出時に「JPKI 認証票のみ」を抽出可能となる。マイナカード未保有者の排除を避けるため、重みの上下は付けない。

3.3 NEW 投票モード3階層

v2.0 §3.2(提案・投票)に投票モードの概念を追加。投票案件ごとに以下のいずれかのモードを設定する。

モード対象認証要件結果の扱い
諮問モード(既定)市民意向把握・施策提案ライト〜住所確認済(v2.0 既存)参考。公的拘束なし
拘束的内部モードCBI 内部運営(v2.0 §3.1.2 既存)住所確認済以上CBI 内部で拘束
公職連携モード(Phase 2+)自治体ネット投票実証等、行政連携時のみJPKI 必須自治体仕様に従う(CiDAO は認証・UI のみ提供)

公職連携モードは CBI が単独で発動できない。自治体(印西市)との協定が成立し、自治体側のシステムと API 連携した場合のみ、自治体側の運用責任下で発動する。

3.4 NEW 投票端末モード

v2.0 はオンライン(ブラウザ/スマホ)のみを想定。将来、自治体が投票所内電子投票(四條畷市方式)を導入し CiDAO 連携を求めた場合に備え、端末モードを抽象化する。

端末モード説明Phase
online(既定)ブラウザ・スマホアプリから個人認証で投票Phase 1〜
kiosk自治体管理の投票所端末。投票管理者がカード読取→端末解放→投票→端末ロックPhase 3+(自治体連携時のみ)

kiosk モードは CiDAO 単独では使用しない。あくまで将来の連携余地として API ・スキーマレベルで対応可能性を残す。

3.5 NEW 投票履歴の改ざん耐性(監査ログ)

v2.0 §4.3(セキュリティ)に追加すべき項目。ブロックチェーンは Phase 1 では採用しないが、それと同等の改ざん耐性を以下で代替する。

3.6 NEW 上書き投票(投票期間中の票差し替え)

つくば市実証で買収・強制対策として有効性が確認された機能。v2.0 §3.2 に追加。

3.7 NEW アクセシビリティ要件

四條畷市の音声機能省略批判を踏まえ、Phase 1 から以下を必須化。v2.0 §3 全体への補足。


4. ロードマップ(v2.0 Phase 対応)

Phase時期目安v2.0 既定スコープv2.1 追加スコープ
Phase 1 2026〜2027 メール認証+ハガキ住所確認、諮問・拘束的内部モード AuthProvider 抽象化(§3.1)の実装基盤のみ準備。上書き投票(§3.6)・監査ログ(§3.5)・アクセシビリティ(§3.7)は Phase 1 から組込
Phase 2 2027〜2028 JPKI 認証(v2.0 §P1)、地域通貨 SBT(v2.0 §P2) JPKI AuthProvider の実装(xID/TRUSTDOCK のいずれか採用)。「公的認証済」段階の追加(§3.2)
Phase 3 2028〜 行政連携(v2.0 §P4)、街活性室連携(v2.0 §P5) 公職連携モード(§3.3)・kiosk 端末モード(§3.4)の設計確定。自治体側の意思決定とセットのため、CBI 単独では発動しない

:Phase 2 以降は v2.0 と同じく 確約ではない想定スコープ。実装可否は Phase 1 リリース後の四半期レビューで再評価する。


5. 印西市議会・行政との接続パターン

5.1 つづきまり子議員提案を受けた CBI の立ち位置

議員提案(令和8年6月議会・一般質問)の射程はA 案=投票所内電子投票(タブレット型・四條畷市方式)に該当する。提案の現段階は導入決定ではなく「研究・検討開始」の段階。下表は議員提案の整理および将来別シナリオ(B/C)が生じた場合の比較。

提案方向参考自治体制度的位置づけ議員提案との関係CBI/CiDAO の関わり方
A. 投票所内電子投票(市議選で開票効率化)四條畷市電磁的記録式投票法(地方選のみ可)。現行法で実施可能★ 議員提案はここCiDAO は直接運営に関与しない(市選管が単独で機器調達・運用)。CBI は市民側からの参考資料提供・市民意向把握での側面支援が可能
B. インターネット投票実証(住民投票・施策意向)つくば市公職選挙ではなく住民投票として実施。現行法可議員提案の射程外CiDAO が認証基盤と UI を提供可能(公職連携モード/将来別シナリオ)
C. 公職選挙そのもののネット投票化現行法不可。総務省研究会で在外選挙のみ検討中議員提案の射程外CBI の射程外。法改正待ち

5.2 議員提案(A 案)に対する CBI の具体的な支援可能性

議員が市議会で「研究・検討」を提案している段階での CBI 側の動き方。すべて議員からの依頼があった場合に発動するもので、CBI 側から押しかけない。

支援内容具体例CiDAO との関係
① 他自治体事例の整理資料提供四條畷市の費用対効果・課題(視覚障害者対応省略批判等)を1枚にまとめた下調べ資料本書 §2.1 と §6.1 参考文献を流用可能
② 市民の電子投票受容意向の調査CiDAO 上で「投票所内電子投票についてどう思うか」の諮問的投票を実施v2.0 §3.2 諮問モードで実装可能(Phase 1)
③ 推進論/慎重論の両論併記資料「八年ぶり再開の勢い」(推進)と「可児市の失敗と訴訟」(慎重)を対比した中立資料本書 §2.1 年表と §1.2 法令整理を流用可能
④ 印西市選管との対話の場設定議員→市選管→CBI の三者意見交換会の場づくりv2.0 §P4 行政連携の入口

5.3 議員提案前に整理すべき論点テンプレ(参考)

議員から下調べ依頼が来た場合、議論の前提として整理して提供することを想定。

表題:印西市における投票所内電子投票(タブレット型)導入の検討にあたって

論点

  1. 目的の優先順位:開票効率化(職員負担軽減)か、無効票削減(民意正確反映)か、市民利便性向上か。優先順位次第で機器選定が変わる
  2. 対象選挙の範囲:市長選のみか、市議選のみか、両方か。期日前投票所のみで先行か投票日も同時か
  3. アクセシビリティ対応:視覚障害者向け音声機能の必須化(四條畷市の批判を踏まえる)
  4. 機器調達方式:京セラ「デジ選」の他に競合機種があるか/自治体間共同調達の可能性
  5. コスト試算:初期導入費・運用費・紙投票との並行運用費
  6. 事故時の救済策:システム障害時に紙投票へ即時切替可能か(可児市無効訴訟の教訓)

CBI からの協力可能性:CBI は CiDAO(市民意向把握プラットフォーム)を運営しており、上記4論点に関する市民意向の諮問的調査は実施可能。ただし公職選挙そのものの運営は CBI の射程外であり、機器調達・運用は市選管の所掌事項。

本テンプレは外部公開しない(v2.0 §法令対応表の趣旨に沿い、議員・市行政との対話用内部資料として保持)。

5.4 NEW CiDAO の「環境整備プラットフォーム」役割

「投票所内電子投票には CiDAO の直接介入余地がない」という表面的事実から「だから CiDAO に役割はない」と読み違えないための整理。議員提案を成功させる側面支援として、CiDAO は『市民の電子投票慣れ/導入合意形成データ/事後フィードバック収集』の3つを担える

5.4.1 直接介入できない領域(再確認)

項目不可の理由
投票所端末の調達・運用公職選挙法/市選管の所掌事項
CiDAOアカウントを公職選挙の本人認証に使う公職選挙法はマイナカード(JPKI)または公職選挙人名簿による本人確認のみ認める
CiDAOでの投票結果を公職選挙の票として算入法的拘束力なし(v2.0 §法令対応表)

5.4.2 間接メリット5層(議員提案を成功させる側面支援)

メリットインパクト確信度
市民の心理的ハードル低下(練習場効果)CiDAO で日頃から電子投票UIに触れる経験 → 本番の投票所端末への抵抗感が事前に削れる
導入合意形成データ「印西市民の◯%が電子投票導入に肯定的(CiDAO 諮問投票より)」という議会説得材料
アクセシビリティのテストベッド視覚障害者・高齢者が CiDAO で試行 → 機器選定要件に反映(四條畷市の音声機能省略批判の再発防止)
事後フィードバック収集導入後「使いやすかったか/不安だったか」を CiDAO で継続調査 → 改善要望を市選管・議会へ
「電子で意見表明する文化」の醸成投票だけでなく日常的な意見集約をデジタル化 → 投票所内電子投票が「自然な延長」に見える

5.4.3 やらない場合に失われる価値

不在の状態起こりうること
CiDAO での諮問投票経験ゼロのまま投票所内電子投票導入「いきなりタブレット渡されても触れない」高齢者続出 → 「やはり紙が良かった」世論形成 → 数年で凍結(過去の可児市パターンの再来)
市民意向データなしで議会審議議員は「市民が本当に望んでいるか」根拠なく審議 → 慎重論に流される or 唐突に進めて反発
事後フィードバック経路なし視覚障害者・高齢者の不満が散発的な投書・クレームとして出るだけ → 改善されず信頼失墜

歴史的教訓:日本の電子投票(2002〜2016)が15年で途絶した最大の理由は、技術トラブルそのものではなく「市民が事前に慣れていなかった/失敗時のフィードバック経路がなかった」こと。CiDAO はこの2点を埋められる稀有なツールであり、四條畷市の再開(2024年)に続く第2の成功事例を印西市で作るための事前準備装置と位置づけられる。

5.4.4 議員提案を成功に導く5年シナリオ

[現在 2026]   印西市民の大半が「電子投票」未経験
   ↓ CiDAO Phase 1:諮問的市民投票を定着
[1〜2年]      市民が「タブレット/スマホで意見表明する」に慣れる
   ↓ つづき議員の提案=市議会で研究・検討(令和8年6月から開始済)
[2〜3年]      印西市選管が他自治体視察・機器選定検討
   ↓ CiDAOで「投票所内電子投票についてどう思うか」諮問投票
[3〜4年]      「市民の◯%が肯定/不安点は△」のデータを議会・市選管に提供
   ↓ アクセシビリティ要件をCiDAOで実地検証
[4〜5年]      印西市議選で投票所内電子投票導入(四條畷の次の成功事例)
   ↓ CiDAOで事後フィードバック収集
[継続]        改善サイクルが回り長期定着

5.4.5 v2.0 既定スコープとの関係

本セクションで述べた5層のメリットは v2.0 §3.2 諮問モードv2.0 §P4 行政連携の範囲内で実現可能。v2.1 拡張アーキテクチャ(§3)の新規実装は不要。つまり Phase 1 リリースをそのまま走らせれば、議員提案の側面支援機能は自動的に手に入る。CiDAO 開発の遅延や仕様変更を理由に議員提案を待たせる必要はない。

本セクションの結論:投票所内電子投票そのものへの CiDAO 直接介入は不可だが、議員提案の成功確率を上げる事前準備プラットフォームとして CiDAO は中心的役割を担える。「CiDAO は無関係」ではなく「CiDAO がなければ議員提案は技術論で終わり市民合意に至らない可能性がある」と読むのが正確。

5.4.6 NEW 候補者人気投票の禁止(公選法138条の3への対応)

CiDAO の機能上、登録者が「次の市議選で誰に投票するか」のような候補者予想投票を実施することは技術的に可能だが、公職選挙法 第138条の3により『公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表』することは禁じられている(罰則:2年以下の禁錮または30万円以下の罰金)。出口調査がマスコミ報道として例外扱いされているのに対し、市民活動団体(CBI)が独自に人気投票を公表すると違反リスクが極めて高い。

CiDAO での実施公選法138条の3との関係判定
「次の市議選で誰に投票するか」を取って結果を公開候補者名を含む人気投票の公表に該当✕ 違反リスク極めて高い
「○○候補の政策提案に賛成か」(候補者名あり)文言次第で人気投票とみなされる可能性△ グレー。候補者名を出すならやらない
「○○という政策テーマに賛成か」(候補者名なし)政策意向調査に該当◯ 合法
「投票所内電子投票を導入してほしいか」(議員提案テーマ)政策意向調査に該当◯ 合法。§5.4.2②導入合意形成データの本体
選挙運動期間中の候補者比較投票事前選挙運動・選挙運動方法制限にも抵触✕ 違反リスク極めて高い
取った結果を公表せず内部参考のみ138条の3は「公表」を禁ずる△ 内部参考なら合法。ただし運営委員会で慎重判断

運用ルール

背景:ユーザー問い『出口調査よりも CiDAO 投票の方が正確じゃない?』への対応として整理。技術的には CiDAO の方が広く・継続的にデータを取れるが、候補者人気予測としては母集団バイアス(CiDAO 登録者は全市民の数%・デジタル親和性高い層に偏る)があり出口調査より精度が劣る。それ以上に公選法138条の3により候補者人気投票自体が禁じられているため、CiDAO の本来の役割は「政策論点の継続的・詳細な意向把握」であり、出口調査の代替ではない。


6. 参考文献

6.1 投票所内電子投票(電磁的記録式)

6.2 インターネット投票(つくば市)

6.3 総務省・在外選挙研究会、公職選挙法改正

6.4 JPKI(公的個人認証)・民間連携

6.5 関連先行事例(市民参加プラットフォーム)

6.6 つづきまり子議員 議会質問出典(令和8年6月第2回印西市議会定例会)


付録 A. v2.0 への変更影響まとめ

v2.0 セクションv2.1 での扱い
§3.1 認証・会員管理本体不変。§3.1 配下に AuthProvider 抽象化(v2.1 §3.1)を Phase 1 から準備
§3.1.3 認証段階と投票重み本体不変。Phase 2+ で「公的認証済」段階追加の予約のみ(v2.1 §3.2)
§3.1.4 マイナンバー未所持者対応本体不変。v2.1 §3.2 で「重みは上げず別枠集計」と方針明確化
§3.2 提案・投票本体不変。投票モード3階層(v2.1 §3.3)・端末モード(v2.1 §3.4)・上書き投票(v2.1 §3.6)を追加
§4.3 セキュリティ本体不変。監査ログ(v2.1 §3.5)を追加
§6.2 認証 API本体不変。AuthProvider 抽象化に応じた API 拡張は Phase 2+
§法令対応表(公職選挙法行)本体不変。v2.1 §1.2 で詳細整理を追加
§P1 認証拡張本体不変。v2.1 §3.1〜3.2 で技術仕様を具体化
§P4 行政連携本体不変。v2.1 §3.3「公職連携モード」・§5 で接続パターンを具体化

結論:v2.0 本体への破壊的変更はゼロ。Phase 1 への実装影響は AuthProvider 抽象化(v2.1 §3.1)と監査ログ(§3.5)・上書き投票(§3.6)・アクセシビリティ(§3.7)の4点のみ。これらは v2.0 のスコープ拡大ではなく 実装方針の明確化と位置づけられる。

付録 B. 改訂履歴

日付変更内容
2026-06-23v2.1 初版新規作成。他自治体動向調査(subagent 2本並列)と AuthProvider 抽象化・投票モード3階層・kiosk 端末モード・上書き投票・監査ログ・アクセシビリティ要件等7項目を仕様化
2026-06-23v2.1.1 訂正つづきまり子議員 Instagram(議会報告 Vol.13)の直接確認により、議員提案が投票所内電子投票(タブレット型・四條畷市方式)に限定され、インターネット投票は念頭にないことが判明。背景notice/§1.1/§5.1〜5.3/§6.6 の4箇所を訂正。提案段階は「導入決定」ではなく「研究・検討開始」であることも明示。CiDAO 拡張アーキテクチャ(§3)の技術仕様は変更なし
2026-06-23v2.1.2 追補「投票所内だと CiDAO を利用するメリットがない?」というユーザー問いに対する整理。§5.4「CiDAO の『環境整備プラットフォーム』役割」を新設(5.4.1 直接介入できない領域/5.4.2 間接メリット5層/5.4.3 やらない場合に失われる価値/5.4.4 5年シナリオ/5.4.5 v2.0 既定スコープとの関係)。直接介入不可と「役割なし」を切り分け、議員提案の成功確率を上げる事前準備プラットフォームとしての CiDAO の位置づけを明示。技術仕様(§3)は変更なし
2026-06-23v2.1.3 追補「出口調査よりも CiDAO 投票の方が正確じゃない?」というユーザー問いに対する整理。§1.2 法令対応表に公職選挙法 第138条の3(人気投票の公表禁止)行を追加し、§5.4.6「候補者人気投票の禁止」小節を新設。CiDAO の機能上は技術的に可能でも、候補者名を含む人気投票・選挙運動期間中の候補者比較は違反リスク(罰則:2年以下の禁錮または30万円以下の罰金)が極めて高いことを明示。運用ルール4項目(運営委員会での起案チェック/該当時起案却下/選挙期間中の候補者関連テーマ全面禁止/出口調査の代替と位置づけない)を仕様化。CiDAO の本来の役割は「政策論点の継続的・詳細な意向把握」であり出口調査の代替ではないと整理。技術仕様(§3)は変更なし