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内水リスク推定 技術仕様

地形モデル topo-0.2.0(2026-09-07 更新)/雨量シナリオ cbi-rain-sensitivity-0.2.0
作成:Community Bank INZAI(印西市市民活動団体登録 08-001)・非営利・無償公開

このページの位置づけ
専門家の方が計算の中身を検証できるように、式・パラメータ・座標系・既知の誤りまで包み隠さず書いたものです。 このモデルは未校正で、浸水深・冠水確率・通行可否のいずれも出力しません。 記載内容に誤りや改善点をお気づきの場合は、末尾の連絡先までご指摘ください。

1. 何を計算し、何を計算していないか

内容
計算しているもの地形だけから求めた「雨水がたまりやすい傾向」の相対指標(0〜100の無次元量)。および、一様・一定の雨を仮定したときの、その指標の縮小表示。
計算していないもの浸水深(m)、冠水確率、通行可否、湛水の継続時間、氾濫の時間変化、外水(河川)氾濫、下水道・側溝・ポンプによる排水、先行降雨による土壌の湿り、解析範囲外からの流入。
校正の状態未校正。重み・しきい値はいずれも仮設定で、実際の冠水実績との照合を行っていません。したがって見逃し率・誤警報率は不明です。

2. 入力データ

データ出典・取得方法諸元
標高国土地理院 標高タイル(dem1a_png/dem5a_png/dem5b_png/dem5c_png/dem_png の優先順で、値のあるものを採用)タイルズーム 13(地上 約15.5 m/画素)。107枚。取得URL・チェックサム・使用画素数は sources.json に全件記録
道路OpenStreetMap(Overpass API・ODbL 1.0)
[out:json];way["highway"](35.72,140.07,35.91,140.32);out body geom;
2026-09-06 取得の全34,879本のうち、車道13種18,024本を使用
公式ハザード区域未取得。市の公式ハザードマップはPDFのみで、区域のGISデータを入手できていません参照リンクのみ
降雨未接続。利用者が数値で入力する方式レーダー雨量(XRAIN等)との連動は未実装
排水施設未取得。全域一律の定数として扱う(第5節)

3. 地形指標の算出(topo-0.2.0)

3.1 格子

標高タイルの画素を、各セルに入るぶんだけ平均して集約します。格子は 468列 × 398行、範囲は南西 (35.640000, 139.980000)、北東 (35.930033, 140.400412) の矩形です。 行政界ではないため、白井市・八千代市・佐倉市・四街道市・酒々井町・成田市・栄町・印旛沼周辺など、印西市の周りの市町を含みます。有効セルは184,912/186,264(99.3%)。 (2026-09-23 に範囲を広げました。それ以前は印西市を囲む 283列 × 266行・南西 (35.717910, 140.067782)〜北東 (35.911679, 140.322005) でした。四角の外へ出ると道路の色分けが消えてしまい、隣の市へ抜ける道を見られなかったためです。) 格子は Web メルカトル(EPSG:3857)で 1セル=メルカトル上の100 m。地上では約81 mにあたるため、 面積・距離・傾斜は行ごとの縮尺係数 cos(φ) を掛けて地上値に直して計算しています。

3.2 窪地処理と流向・流量

3.3 合成式(本ページ公開時にデータから逆算・検証した)

この合成式は、前の版(topo-0.1.0)の公開データから逆算して確定させたものです。生成スクリプトが外部環境にあり回収できなかったため、出力から式を復元しました。

score = 100 × [ 0.25 · clip( −相対標高 / 5 m )
            + 0.35 · clip( 窪地深さ / 2 m )
            + 0.25 · clip( log₁₀( max(1, 集水面積) ) / log₁₀(10⁶) )
            + 0.15 · clip( 1 − 傾斜 / 10° ) ]

clip(x) = min(1, max(0, x))
検証:前の版の有効セル74,110すべてで上式と保存値を突き合わせ、最大誤差 0.12 点(保存値の丸めの範囲)、誤差0.5点を超えるセルは0件でした。現在の版はこの式をそのまま実装しています(build_static.py)。 重み(0.25/0.35/0.25/0.15)と正規化スケール(5 m/2 m/10⁶ m²/10°)は status.json の記載と一致します。

※ 重みとスケールの根拠:ありません。文献値でも実績からの推定値でもなく、開発時に置いた仮の値です(status.json も calibration_status: 仮設定・未校正 と記録しています)。

3.4 区分(道路の色分けに使用)

score区分該当した道路線
0 以上 25 未満冠水リスク低1,522
25 以上 50 未満注意18,668
50 以上 75 未満冠水リスク高3,804
75 以上使用困難となる可能性あり477
欠測判定保留・情報不足132

しきい値 25/50/75 も仮設定です。status.json は road_impassable_threshold: "UNVERIFIED" と記録しています。

4. 道路への割り当て

この割り当ては「その道が通っている地形の傾向」であって、道路構造の評価ではありません。路面高、縁石、アンダーパス、橋・高架(橋の上と下の道を区別していません)、side walk の有無はいずれも未考慮です。

5. 雨量シナリオ(cbi-rain-sensitivity-0.2.0)

防災MAPの「CBI独自シミュレーション」で、雨量 R(mm/h)と継続時間 T(時間)を入力したときの計算です。

E = max( 0, R × C − D ) × T
参考指標 = score × E / ( E + 50 )
記号意味既定値備考
C流出率0.8市内の実測値ではありません。全域一律。
D排水相当量(mm/h)0全域一律の定数です。場所ごとの排水能力の差を表せません。
50感度の尺度(mm)—表示の効き方を決める任意の仮尺度で、冠水が始まる基準ではありません。

この式の重要な性質(誤解されやすい点)

E / (E + 50) は地図全体に共通のスカラーです。したがって雨量や継続時間を変えても、 全セルが同じ倍率で薄く/濃くなるだけで、地点どうしの危険度の順位は一切変わりません。 「50 mm/h なら A地区が、100 mm/h なら B地区が危ない」といった、雨の強さによる危険箇所の入れ替わりは表現できません。

また E は単純な水収支であって湛水深ではなく、同じ E であれば降り方(ピークの時刻・降雨波形)が違っても同じ結果になります。 入力を 0 にしても、残留水や外水氾濫を考慮しないため「安全」を意味しません。

6. 既知の不正確さ

6.1 座標系の不整合は修正しました(topo-0.2.0)

前の版(topo-0.1.0)は status.json に processing_crs: "EPSG:32654"(UTM 54N)・cell_size_m: 100 と記録しながら、 実際には Web メルカトル(EPSG:3857)の100 mをそのまま地上100 mとして扱っていました。北緯35.8度では地上約81.1 mにあたるため、 集水面積が約1.52倍に過大、傾斜が約19%過小になっていました(実際、旧データの集水面積の最小値は1セル=10,000 m²でした)。

現在の版では、格子は Web メルカトルのまま(表示の重ね位置を変えないため)で、 面積・距離・傾斜の計算時に行ごとの縮尺係数 cos(φ) を掛けて地上値に直しています。 1セルの地上面積は6,557〜6,605 m²です(広げる前の範囲では6,560〜6,592 m²)。UTM へ移さなかったのは、この地域では子午線収差により最大約100 mの回転ずれが生じ、 地図への重ね合わせが崩れるためです。

あわせて、窪地を埋めた後の平坦部で D8 の流れが止まる不具合も見つかり、ε 版で修正しました (修正前は集水面積の平均が本来の47分の1になっていました)。

項目旧 topo-0.1.0新 topo-0.2.0
有効セル74,11075,278(欠測なし)
標高タイルズーム12(約31 m/画素)ズーム13(約15.5 m/画素)・セル内平均
1セルの面積10,000 m²(誤り)6,560〜6,592 m²
集水面積の平均1,179,077 m²792,375 m²
傾斜の平均1.205°1.300°
score の平均40.740.5
新旧の相関 0.888。区分(低/注意/高/使用困難)が変わらないセルは86.8%。 標高が下位10%のセルの平均scoreは62.4、上位10%は30.3で、低い土地ほど高い値になっています。

※ どちらの版も未校正なので、「新しい方が実際の冠水をよく当てる」ことを示したわけではありません。 新しい版で確かに良くなったのは、地上の面積と距離が正しくなったこと・欠測が無くなったこと・処理が公開され再現できることの3点です。

6.2 その他の限界

7. 排水能力を反映するために必要なデータ

「排水能力は場所によって異なる」というご指摘のとおりで、現行モデルの最大の欠落はここです。 費用対効果の高い順に3段階で整理します。

段階1:排水区ごとの計画降雨強度(最小の一歩)

必要なもの粒度入手先できるようになること
雨水排水区の区域界(GIS)と、区ごとの計画降雨強度・整備状況排水区ポリゴン印西市 下水道課(公共下水道事業計画・雨水計画)D(排水相当量)を全域一律から排水区ごとの値にできる。管路モデルを作らずに場所差を入れられる
都市下水路・農業排水路の系統路線市・土地改良区下水道区域外(農地・調整区域)の扱いを分けられる

段階2:施設の諸元(実際の排水を計算する)

必要なもの必要な項目入手先
雨水管渠台帳管種・管径・延長・勾配・管底高(インバート)・上下流の接続関係・合流/分流の別印西市 下水道課
マンホール・雨水ます位置・地盤高・蓋高、ますの数と呑み口の形状同上
ポンプ場・排水機場台数・能力曲線(Q–H)・起動/停止水位・実運転記録・停電時の扱い市/千葉県
調整池・貯留施設容量・越流堰高・オリフィス径・常時水位市/開発事業者
放流先の水位河川・水路の水位時系列、吐口の管底高、逆流防止弁(フラップゲート)の有無と操作千葉県 河川課/国交省
維持管理の記録閉塞・堆積・清掃履歴、過去の溢水通報市

※ 排水能力は「管径」だけでは決まりません。下流の水位(放流先の背水)で上流の能力が落ちるため、管路の接続関係と放流先水位が揃って初めて意味のある計算になります。 これが「場所によって異なる」ことの主因で、管径から機械的に推定できない理由でもあります。

段階3:地表と検証(モデルを信用に足るものにする)

必要なもの必要な項目・粒度入手先
冠水実績と、確認済みの非冠水範囲・深さ・開始と解消の時刻・写真・道路規制・原因。複数の豪雨イベント別。未報告を非冠水とみなさない市・消防・道路管理者。市民投稿(みんつく千葉冠水マップ等)は許諾を得たうえで
降雨の時系列・空間分布レーダー雨量250 m級・5分以下、地上雨量計、先行降雨XRAIN(河川情報センター・有償配信)、市の観測記録
高解像度の標高1 m級DEM(航空レーザ)、計測年、標高基準。橋面と路面の区別国土地理院/現地測量
路面高・アンダーパス縦横断図、最低路面高、縁石高、側溝断面。六軒ガード下等を優先道路台帳
土地被覆・浸透能不透水面率、土壌分類、浸透試験、建物フットプリントJAXA土地被覆図+市の整備図+現地試験

検証は校正用と検証用のイベントを分けて行い、見逃し率・誤警報率、浸水深と発生時刻の誤差を示したうえで、 適用範囲と誤差を明らかにしてから予報雨量との自動連動へ進む、という順序を守ります。

8. 再現と照会

生成スクリプトを公開しているので、python pipeline/build_static.py で第三者が同じ格子を作り直せます。標高タイルはキャッシュされ、2回目以降は地理院サーバーへ取りに行きません。

ご指摘・照会先:Community Bank INZAI communitybankinzai@gmail.com
本モデルは行政の発表する情報に代わるものではありません。避難や通行の判断は、必ず印西市および気象庁の公式情報に従ってください。

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